新会社法を確認する

Q.出資額が1円であっても株式会社を設立できるのですか?

A.会社法ができる前は、株式会社の資本金は1,000万円以上、有限会社の資本金は300万円以上という最低資本金制度が設けられていました。
 しかし、会社法においては、最低資本金制度が廃止され、出資額が1円でも株式会社を設立できるようになりました。そして、最低資本金制度の廃止によって、資本金減少額の上限規制も廃止され、資本金がゼロとなるまで融資を行うことが可能となりました。
 最低資本金制度は、会社の債権者保護という考え方に基づくものです。株式会社の株主や有限会社の社員は自身の出資の範囲内でのみ責任を負います。会社がつぶれても、株主は何かの責任をとるわけではなく、出資したお金が返ってこないだけです。そのことで困るのは会社の債権者であり、会社に対して取立てを行うに当たってしっかりしたものがないと困りますので、このような最低資本金という制度が設けられました。
 しかし、債務超過の会社は世の中に多数存在します。最低資本金1,000万円で会社をつくっても、業績がたちまち悪化し、累積赤字が資本金の部分を食っていき、債務超過に陥ってつぶれてしまいます。最低資本金という制度が存在しても、有名無実であって実効性に乏しいといわざるを得ませんでした。

 会社法においては、上記のように最低資本金制度は廃止されましたが、株式会社は純資産額が300万円以上なければ配当を行えなくなりました。すなわち、資本金の金額に関係なく、純資産額が300万円に満たない場合は、剰余金が存在しても株主にそれを配当することは不可能です。
 仮に、資本金1万円の会社があり、純資産額は201万円とします。すなわち、留保利益が200万円あるとします。そこで、200万円のうちの100万円を配当しようとしても、できません。純資産額、いわゆる純資産の部の合計額を300万円以上にしなければ配当できず、300万円以上になればそのオーバーした分については配当することができます。

 なお、かつて存在した最低資本金制度の例外として、経済産業大臣の確認を受ければ最低資本金未満で株式会社や有限会社を設立することができました。このような会社は確認会社と呼ばれています。確認会社は、5年以内に最低資本金(株式会社なら1,000円、有限会社なら300万円)以上に増資するという条件の下で、設立できることになっていました。そして、定款に、このように増資できなかった場合は解散する旨を定め、かつ登記することが設立の条件の一つとされていました。
 このような確認会社については、最低資本金制度の廃止に伴い、5年以内に増資する必要はなくなりました。上記の定款の定めを削除しておかなければ、5年後に解散になってしまうことから、定款の定めを削除し、かつ登記を抹消してもらわなければならなくなりました。
定款変更については、取締役会の決議か、取締役の決定によって変更できます。確認会社については、有限会社の場合には取締役会は存在しませんので、取締役の過半数の決定によって、解散事由についての定款変更を行います。その後、解散事由の登記を抹消します。

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